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MORI channel|水戸芸術館現代美術センター学芸員・森司によるブログ。学芸員の日常や最新のアートニュースを伝えます。
2006.12. 6

「夏への扉―マイクロポップの時代」展の全貌

2007年2月3日9時30分オープン

【出品作家】
奈良美智、杉戸洋、落合多武、有馬かおる、青木陵子、タカノ綾、國方真秀未、島袋道浩、野口里佳、半田真規、森千裕、田中功起、K.K.、大木裕之、泉太郎


【趣旨】
松井みどりは、美術評論家として1995年から2006年に至る約10年間のアートシーンの中に「マイクロポップ」的表現の出現と実践の現場を読み取ってきました。
作家が産み出す新しい表現と美術評論家としての対峙は、それまでにはなかったタイプの作品群が位置する場所を、言説として思索する過程であり、松井は専門とする文学的分析手法から「マイクロポップ」という概念を獲得するに至ります。
 本展覧会は、松井みどりが「マイクロポップ」なる概念を獲得する過程において、重要な働きかけをした作家の作品と、「マイクロポップ」の視座から未来を見渡した時に、さらなる展開を担うと思われる若手作家の作品とによって構成されるグループ展です。
 本展覧会は「マイクロポップ」というコンセプトのもとに15人の日本人作家―タブロー・ドローイングを出品する奈良美智、杉戸洋、落合多武、有馬かおる、青木陵子、タカノ綾、森千裕、國方真秀未、写真作品出品する島袋道浩、野口里佳、インスタレーション作品を出品する半田真規、K.K.、ビデオ作品を出品する田中功起、大木裕之、泉太郎―を集め、彼らの新旧作品250余点を通して、独自な創造として発生しながらも、ひとつの共通性を持つようになった、ある芸術的創造力の姿を提示し、その芸術表現と同時代の若い人々の生き方や感性との共通点や、後の世代への影響力について考えようと試るものです。
 「マイクロポップ」とは、歴史が相対化され、様々な価値のよりどころである精神的言説が権威を失っていく時代に、自らの経験のなかで拾い上げた知識の断片を組み合わせながら、新たな美意識や行動の規範をつくりだしていく「小さな前衛」的姿勢です。この姿勢は、人や情報や物がかつてないスピードと規模で世界中を動き、遠くの出来事が自分の生活のベーシックなところまで揺るがしかねないグローバル時代にあって、それぞれの人が常に流動する状況に反応しながら自分自身の判断の基盤を作り、「生きている」という手ごたえを感じるために「小さなサバイバル」を試みているとも言えるでしょう。
 本展は、「小さなサバイバル」の試みである個々の作品を一堂に集めることで、時代の様相としての傾向を視覚体験する場となると同時に、本展覧会を契機として、これまで、ややもすると周辺的にとらえられてきた領域の表現が、新しい価値、新しい芸術観として、広く認知され、同時に議論される場を提供しようとするものです。


【展覧会概要】
展覧会名:「夏への扉-マイクロポップの時代」
欧文表記: The Door into Summer : The Age of Micropop
会   期: 2007年2月3日(土)→ 5月6日(日)
開館時間: 9時30分~18時 ※入場は17時30分まで
会 場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
休 館 日:月曜日※ただし、2月12日、4月30日(月・祝)は開館。翌、2月13日、5月1日(火)休館。
入 場 料:一般800円、前売・団体(20名以上) 600円
中学生以下・65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方は無料。

主 催:財団法人水戸市芸術振興財団
協 賛:アサヒビール株式会社、資生堂、JEANS FACTORY
協 力:株式会社創夢
企 画:松井 みどり(美術評論家)、森 司(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)


【展覧会についてのお問い合わせ】
展覧会について:森 司(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)

広報・写真貸出について:米原 万智/email: cacpr@car.ocn.ne.jp
水戸芸術館現代美術センター:Tel.029-227-8120/Fax.029-227-8130
〒310-0063 茨城県水戸市五軒町1-6-8 http://www.arttowermito.or.jp/

【注】
※ 松井みどり(美術評論家)=上智大学、東京大学大学院で英米文学、プリンストン大学大学院博士課程で比較文学を専攻し、東北大学の助教授として英米文学の分野にて現代詩を研究していたが、同大学を辞した1994-95年頃から美術評論家として、海外の学術誌、論文集、企画展カタログに同時代の日本の現代美術の潮流や作家について論文を寄稿しはじめ、日本を代表する美術評論家として日本のアートシーンを精力的に海外に紹介している。
※ 「マイクロポップ」=仏哲学者ジル・ドゥルーズが著書『カフカ:マイナー文学のために』において明らかにした、新しい時代の芸術のモデル。メジャーな言語を使って表現することを余儀なくされながら、そのなかで独自の脱線や言い換え、表現コードの組み替えを行い、既存の表現の限界を超えて新しい表現を作っている想像力のありかたを指している。
※ 「夏への扉」=アメリカのSF作家、ロバート・A・ハインラインの小説のタイトルから取られている。この作品に流れる楽観的な世界観は、「現実」が限定されたひとつの世界であるとは限らず、むしろそれは、一瞬一瞬の選択によって変わる無限の可能性と崩壊の危機をはらむ、流動的なものであるという意識に裏打ちされている。

Posted by 森司 at 22:25 | 夏への扉
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松井さんの「マイクロポップ」はスキです。同じ大学の同僚に「私美術」を提唱した方がいらっしゃるようですが、とても似ていると感じました。そのあたりの交遊関係でできた概念なのでしょうか。
ほかにもお仲間がいらっしゃれば教えてください。

Posted by Rie at 2007年7月 2日 02:48











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